ムラサキ(紫草)
被葬者論争が再燃した奈良、高松塚古墳には、謎が多い。国宝壁画の
女性群像のうち1人だけ、衣装の色が消えうせているのも、そのひとつだ。
群馬県高崎市の染色研究家、山崎青樹さん(81)は「当時の服色規定から、
高位の女性が着た浅紫(あさき)だろう」と主張してきた。
▲02年からの科学調査で薄い紫色が見つかり、仮説は実証された。壁に
直接すり込んだ染料が、すっかり色あせたらしい。
山崎さんが復元した飛鳥美人衣装4種が、4月2日から高崎市染料植物園
で公開される。再現された浅紫(あさき)は現代のスミレ色に近く
すがすがしい春の息吹を感じさせる。
▲日本古来の紫は、野草のムラサキ(紫草)の根から色素成分を絞り出し、
何日もかけて染め重ねた。
ムラサキは水はけのいい環境でしか育たず、栽培が難しい希少植物だ。
製品化の手間と費用は途方もなくかかる。王朝の優美や江戸の粋を示す
色として、珍重されたのもうなずける。
▲天然のムラサキはめったに見当たらず、環境省の絶滅危惧種に
指定された。外敵もいる。色素を持たない外来種のムラサキは生命力
が強く、在来種と簡単に高配して本来の性質を失わせる。
緑の回復にと、外来種が盛んに栽培された時期もある。ブラックバス騒動
はよそごとではない。
▲在来種をよみがえらせる試みが、各地で進む。山崎さんの復元には、
埼玉県の国営武蔵丘陵森林公園で栽培したムラサキが使われた。
京都府福知山市製薬会社農場は約40年前から試行錯誤の末、全国の
植物園や学校に種を分けるまでにこぎつけた。
▲失われかけたものを次の世代に伝える仕事は、困難ではあるが、努力は
惜しみたくない。幻の花の復活にも、匠の技の継承にも、かよわい生命
を守る豊かな心を育てることにも。
平成17年3月21日 毎日新聞 余録より
◇ 雑談 ◇-----------------------------------------------
ムラサキは日当たりのよい山の草原に生え、太い紫色の根がある。
茎はひょろ長く約50cm。
葉は互生(互い違いに向き合っている)で茎にあらい毛、葉に少し硬い
ねた毛がある。花は白色で径4mm内外。
この植物は多年草で九州の北部では6月初旬に咲き、日本の絶滅危惧種
の一つ。根を薬用や紫色の染料にする。
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